「絶好調」、「今のままが続けばいいな」と思うような好調の時に次の手を打つことを考えるようにしなければ、衰退の時は思いのほか早く訪れます。かつて世界一あるいは日本一になった企業が経営危機に見舞われています。そのような企業に共通するのが評価制度や人事制度です。同族経営による世襲ではなく、一見すると公平な過去の実績に基づく評価やポスト(権限)が与えられることに問題があるのではないかと私は考えます。
限られた人的リソースの中から、役員やリーダーを選ぶ際に社員として事業遂行をするのに成績のよかった者を選ぶことは社員への説明がしやすく、成果へ報いる意味もあって受け入れられてきたと思うのです。しかし、この方法が有効に機能するのは経験や実績がそのまま経営に活かせる場合です。従来型の方法で成果が将来にわたって見込める安定的な事業環境が継続していなければ古い成功法には意味がありません。
役員やリーダーを選ぶ際に経営の専門家や同族の後継者を置く場合はどうでしようか? 今、好業績の企業にはオーナーが一代で築いた新しい会社や同族経営の会社が意外に多いことに気付かされます。それぞれの知見や権力を活かして、業績や企業の継続に対する強力なモチベーションが合わさるとよいようです。意思決定において、本人は気づかないうちに偏重傾向が出てくるのでその中から悪い部分を取り除く(致命的な失敗にさせない)組織の運営において仕組み作りが必要です。派閥や同一思考の取り巻きがはびこると機能しません。
好調の時に次の手を打つ、これが難しいです。多角化経営の失敗例を挙げて既得権者が地位の保身のために反対するようなことを防ぎつつも、一事業の失敗で経営が傾かないようにしたうえで、いくつもの事業に挑戦していくようにしていく組織運営のシステムを作らなければいけません。
特に、現在価値のうち将来価値がほとんどないものを間違って高く評価しないようにすることです。